相馬眼 | 競馬予想メルマガ検証!競馬投資の極意とは?(競馬の錬金術師)

相馬眼

相馬眼(そうまがん)とは、競走、馬術、軍役、使役などに供される馬の能力・資質を見抜くことができる見識を指す言葉である。

紀元前から近代の産業革命に至るまで、馬は交通、運輸、軍事など様々な場面において重要な位置を占めており、その資質を見極める目を持つこともまた重要視されてきた。史上には馬の繁殖・調教に特化した役所が設置された例が多くあり、ゆえに為政者が優れた相馬眼の持ち主を迎え入れる例もあった。

こうした者の中では、中国の春秋戦国時代に穆公(ぼくこう)に仕えた伯楽孫陽がよく知られる。孫陽はその優れた相馬眼から天馬の守護星である「伯楽」が通称となり、相馬に関する様々な逸話が伝えられている。「相馬眼に優れた者」転じて「人を見る目を持つ者」を指す言葉「名伯楽」は孫陽に由来したものである。

唐代の詩人・韓愈が眼のある者の重要性を説いた「世に伯楽有り、然る後に千里馬[1]有り。世に千里馬は常に有れども、伯楽は常に無し(世有伯楽 然後有千里馬 千里馬常有 而伯楽不常有)」という一節もよく知られる。

近代以降になると競馬、競技としての馬術が普及する。競走馬・馬術競技馬は、最上の血統であれば非常に高価なものとなる反面、必ずしも価格通りの成績を残さない例も多々あるため、購買の際にその実質を見極めることが重要視される。この世界でもやはり優れた相馬眼を有する者が優遇され、世界最大規模の競走馬生産・育成グループであるゴドルフィン、クールモアといった競馬組織は、それぞれ相馬眼があるとされる調教師、エージェントを引き抜き[2]、多くの名馬を輩出している。

日本では、安価な幼駒を購買して活躍馬を輩出する岡田繁幸、竹園正繼や社台グループ創業者・吉田善哉などが優れた相馬眼の持ち主と評価される。また馬術の世界においては、近代馬術の大成者とも評されるジェームス・フィリスがいる。フィリスがその生涯で調教に失敗したものは僅か2頭であると言われ、日本有数の馬術家であった遊佐幸平はこれを指して「(技術の他に)彼が馬を観る鑑識に卓越していて、調教をしても見込みのない馬には手を付けなかったことを物語るものである」と述べている[3]。

相馬の着眼点

優れた相馬眼を持つとされる人々が具体的にどの点を見ているのかは千差万別であるが、一般的には、馬体の骨格や歩行動作、顔つき、筋肉の付き方、馬の性格等を総合的に判断していると言われる。しかしながら、最終的な判断においては、自身の経験に基づく直感に頼る場合も多く、優れた相馬眼を持つと言われる人達は、この直感が非常に秀でているとされる。

そのため、自身が選択した馬の選択理由を口頭で表現しづらい事も多いという。一方で現代の競走馬については、近親繁殖を繰り返し遺伝構成がどの馬も似通っているため、その外見からは能力を判断できないとする意見もあり、動物行動学者のデズモンド・モリスは「栄光と屈辱を分ける決定的な要因は、個々の循環器系の効率である。違いの秘密は外見では分からない内臓にある」としている[4]。

相馬眼脚注

^ 千里を走れるほど強健な馬のこと。
^ 河村清明『馬産地ビジネス – 知られざる「競馬業界」の裏側』(イースト・プレス、2002年)331頁。
^ 遊佐幸平『遊佐馬術・改訂版』(第一出版株式会社、1985年)28頁。
^ デズモンド・モリス『競馬の動物学 – ホース・ウォッチング』渡辺政隆訳(平凡社、1989年)149頁。

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