出馬投票
出馬投票(しゅつばとうひょう)とは、競走馬が競馬の競走に出走するために必要な登録申請の事である。出馬投票を行うのは競走馬を所有する馬主である。それぞれの競走は競馬番組として施行条件が発表されており、その競馬番組に示された条件に該当しない競走馬の出馬投票は認められない。
この項目は出馬投票であるが、競走に出走が決まるまでの諸事項についても取り上げる。
日本の競馬は中央競馬と地方競馬に分かれており、それぞれは異なるため、場合分けをして説明する。
中央競馬における出馬投票
競走が行われる週の木曜日(年始などの変則開催時は例外あり)に出馬投票が受け付けられる。出馬投票は競走毎に行われる。
特別競走及び地方競馬で実施される指定交流競走においては、競走が行われる週の前の週の日曜日(例外あり)に特別登録の受付が行われ、この特別登録がない馬は、その競走への出馬投票はできない。
またグレードワン競走及び地方競馬のダートグレード競走の特別登録は、さらに1週前に行われる。(2008年までの2歳馬限定のグレードワン競走は除く)
地方競馬における出馬投票
競馬番組は開催の直前にならないと確定しない。というのも、競走馬の出走状況を把握した上で競走を編成するためである。従って、事前調査を兼ねて開催の前に、その開催に出走する旨があるかどうかを事前に登録を行う。
出走する意思(その後、出走しなくても当然構わない)がある場合にはこの段階で登録しなければならない。登録がない場合には、その開催に出走することはできない。主催者はこの事前の登録をもとに競走を編成し、競走の施行条件を定め、競馬番組を発表する。
この段階で事前に登録された競走馬は出走する競走を指定される。
この指定された競走以外への出走投票は認められない。この際、その後の出走取りやめなども想定し、出走可能頭数を上回る数の馬を一つの競走に割り当てる。その後、指定された競走に出走させる場合には、競走の前日(前々日に行われることもある)に行われる出馬投票を行う。
また、重賞競走などでは、中央競馬同様に特別登録が行われる。
出馬投票が出走可能頭数を超過した場合
出馬投票によって、出走希望頭数が出走可能頭数を超過する場合には、選定基準の下位の馬より除外される。日本の中央競馬の場合、出走可能頭数は最大で18頭までであるが、コース形態や移動柵の設置場所によって変動する。頭数制限が敷かれた1991年以前は20~30頭も出走するレースもあった。
選定基準は獲得賞金順や過去の競走実績、レースの間隔などを加味して決められる。競走によって選定基準は異なる。選定基準が同一の場合には抽選が行われ、抽選で当選した馬が出走できる。当選しなかった馬は競走から除外される。なお、中央競馬においては除外された競走馬には優先出走権が付与される場合がある。
中央競馬において、選定基準が下位のために除外された競走馬を非抽選馬、抽選で除外された競走馬は非当選馬と呼ぶ。除外された競走馬は同じ週の他の一般競走に改めて出馬投票することができる。
出馬投票の出走希望頭数が開催基準頭数に満たない場合
出走希望頭数が開催基準頭数(3歳の未勝利戦は5頭、それ以外は4頭)に満たない場合は原則として競走を取りやめる。
ただし、重賞競走(GIIIおよびJ・GIIIを除く)、トライアル競走、国際指定競走において外国馬の出走申込並びに指定交流競走で地方競馬所属馬の出走申込があった場合は競走を実施する。
出馬投票の中央競馬における競走の分割
出走希望頭数が開催基準頭数に満たすことが出来ずに競走が取りやめとなった場合、その分を補充するという意味合いで、一般競走の中で出走希望頭数の多かった1競走を選んで競走の分割を行う場合がある。
1997年度までは、競馬番組の発表の段階において、GI競走開催日(2歳戦は除く)とあらかじめ12競走が開催される日を除く全ての開催日は11競走を編成していた。しかし、出走希望頭数が最も多くなった条件の競走を2つに分割(分割ABの2競走。競走の取りやめがあった場合には2競走を分割してそれぞれAB・CDとして施行)して開催するケースが多く、結果的にほとんどの開催日は12競走行われてきた。
そこで、1998年度から一部の例外日(東京優駿・ジャパンカップ・有馬記念施行日)を除く開催日はあらかじめ競馬番組を発表する段階において12競走を編成するようになった。従って、出走希望頭数が開催基準頭数に満たず競走が取りやめとなった場合に限り、競走が分割されるようになった。
12競走を超えて編成することは競馬法施行規則により、行うことができない。
地方競馬においてはあらかじめ、競馬番組を発表する際に、全出走予定馬を各競走に分けて編成する形で発表しているので、出走希望頭数が開催基準頭数に満たない場合には競走が取りやめになるだけであり、中央競馬のように他の競走が分割されることはない。
出馬投票後
出馬投票で除外されなかった場合には、その競走馬は競走に出走することができる。また、出走が決まった馬は出馬表(後述)によって速やかに発表される。
出走が決まると次はゲートの順番(これを以後、枠順と呼ぶ)を決める。枠順の抽選を行う日は競走により異なるが、中央競馬は主にその競走の勝馬投票券が販売開始される日の前日、地方競馬は出馬投票が終了次第速やかに枠順の抽選が行われ、枠順が確定する。
一部のグレードワン競走では、現在でも抽選機による公開(といってもマスコミなどへの公開であり、ファンが参加できるものではない)の枠順抽選が行われている。八大競走やジャパンカップ・ジャパンカップダートではコンピューターによる抽選、それ以外は新井式回転抽選器による抽選が行われている[1]。
出走取消
日本の競馬では出馬投票後の出走取消は疾病などによるやむを得ない場合に限られている。 外国の競馬では当日の馬場状況によって出馬投票後に出走を取り消すことは多々ある。
出馬投票(出走馬確定)後、枠順が確定する前に出走を取り消す場合には、枠順抽選からはずされ、その後の出馬表には掲載されず「枠順確定前出走取り消し」として扱われる。枠順確定後の取り消し、並びに競走除外(装鞍所到着後、パドック周回時を含め競走の発走前の負傷による出走辞退)の場合はそのまま出馬表に掲載される。
また勝馬投票券の扱いについては、当該の競走の馬券発売後の取り消し(除外)があった場合に、取り消し(除外)当該馬に関連する全ての投票券がレース確定後払い戻される。
出馬表
出馬投票が終了し、出走馬が確定した時点で発表される出走馬を知らせるための表のこと。日本では「枠番連勝」の勝馬投票券が発売されていることもあり、枠番および馬番の扱いが他国とは大きく異なっている。
中央競馬において、出馬表に書かれる競走馬の順番は枠順が決定してない段階と、決定後の段階で異なる。
「枠順が決定してない段階」では馬名のアイウエオ順に並べられる。この際に馬番号は附されない。
「枠順決定後」はゲートの順番である馬番号順に並べられる。「枠順確定前出走取り消し」となった馬については「枠順決定後」の出馬表には記載されない。
日本国外の競馬では出馬投票終了の時点で馬番号がつけられ、この順番に出馬表に並べられる。海外での馬番号は負担重量の重い順に並べられ、同じ負担斤量の馬は現地表記のアルファベット順に並べられる。負担斤量の重い馬は通常、他の馬よりも実績があるため、その実績に敬意をもって馬番号の若い方に並べられている。
その後、ゲートの順番が決定されるが、この順番は日本ではゲート順、または枠番号などと表記される。従って日本と異なり馬番号とゲート順(枠番号)は全く関係性がない。
日本中央競馬会のホームページでの外国の競馬の出馬表の掲載は馬番号順に並べられているが、日本のマスコミなどが掲載するものは日本にあわせてゲート順に並び替えられたものが掲載されていることがある。
開催中止時の出馬投票について
台風や積雪などの気象条件の悪化や、大地震などの天災、さらには機器故障や開催関係者による労働争議(例として厩務員ストライキなど)などの不測の事態が原因で、正常かつ公正な競馬の開催が困難となり、その日の競馬施行を中止し後日代替開催(途中打ち切りによる続行開催の場合も含む)となった場合は、原則として中止になった当日の枠順は全て取り消され、改めて出馬投票をやり直すことになっている。
ただし、最近は出馬投票のやり直しをしないで、中止時の枠順をそのまま有効にして代替(続行)開催を行うケースがある。これは、枠順の変更に伴う有利不利などでファンに馬券推理・検討の上で混乱をきたすことがないようにするため、また競馬新聞の作り直しや、販売済みの新聞の交換などが発生しないよう、競馬新聞関係者の負担を減らすための目的もある。
再出馬投票なしでの代替(続行)開催が適用される条件として、
前日発売を含め、勝馬投票券の発売前であること
出走予定馬に対する、輸送などの影響が少ないこと
が、挙げられる。
出馬投票注釈・出典
^ 『優駿』2011年3月号、p.166。
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