風のシルフィードの時代背景
風のシルフィードの時代背景
連載が終了する1993年まで、海外のグレード競走(GI・GII・GIII)を勝った日本調教馬はおらず、作中で菊地もそのように言及している。そして、シルフィードがGIIIのドーヴィル大賞典で日本調教馬として海外グレード競走の初勝利を挙げたことになっている。
なお、実際に海外のグレード競走で初めて勝った馬は、1995年の香港国際カップに勝利したフジヤマケンザンで、そのときの騎手は蛯名正義であった。また、グレード制導入前に遡れば、1959年にハクチカラが勝利したワシントンバースデーハンデキャップが、日本調教馬による海外重賞初勝利である。
連載開始当初、マキシマムはせり市で3億円という実際の競馬界でも最高額となる金額で落札されたが、連載中に現実の競馬界では3億5000万円という高値で取引されたサンゼウスが登場した。これを意識してか、作中でもサンアドニスという高額取引馬が登場し、キュータと新馬戦で対決している。
同一年の菊花賞終了後から有馬記念のファン投票の間まで、菊地厩舎陣営の“調教師や騎手が、その年の秋の天皇賞優勝馬(ヒヌマボーク)のことを知らなかった”という現実にはあり得ない設定が、競馬にある程度の知識がある読者から本作品が批判を受ける原因の一つとなっている。
これは、ファン投票選出1位のヒヌマボークに投票しているファンよりも、現場に近い立場の競馬関係者の方が状況を把握していないということで、本来、競馬関係者ならば、数多くある下級条件馬ならともかく、GI優勝馬を知らないはずがないということである。
また、騎手・島村のヒヌマボークに騎乗することになるエピソード(勝利数が不足している場合、GIレースの出走条件となる実際のルールを無視している状況)を含め、ストーリーの構成上仕方の無い設定とも言える。
少年マガジンの対象読者層が競馬に携わることがほとんどない少年である関係上、競馬を知らない読者にも分かりやすく配慮したという擁護意見もあるが、一方で、そういう配慮の必要性は認めながらも、競馬界の人間があまりにも内部のことを知らなすぎると捉えざるを得ない演出に疑問を呈する人もいる。
この他、「馬の鞍傷に塩を塗りこむ」といった現実の競走馬を扱う上では有り得ないかけ離れた表現などが、続編にあたる蒼き神話マルスにも共通して多数見られるが、上記のような背景もあり、また馬が喋りこそしないものの過度な感情表現を行うといった描写からも、そもそも純粋な競馬漫画というよりは競馬という舞台を借りたスポ根マンガとして制作されたものでは、という見方も存在するし、実際にマルス連載直前時に掲載された週刊Gallopのインタビューで作者自身「シルフィードを連載してた当時は競馬の事をほとんど知らなかった。無茶苦茶なエピソードもあるけど、競馬漫画ではなくスポ根物の漫画として読んで欲しい」と語っている。
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